近未来のコンピューター犯罪と戦う、サイボーグ警察組織の物語をアニメ化した映画ですが、アニメーションと言って馬鹿にしてはいけません。 この映画から全世界でヒットした「マトリックス」に、随所に引用されているすごい映画なのです。 全編に「ターミネーター」の様な独特の近未来の雰囲気を漂わせ、見ている物をぐいぐい引きつける傑作です。 アニメなんか絶対に見ないと思っている大人でも内容の質の高さには納得するのではないでしょうか。 と言うより、難しすぎて子供には理解できないでしょう。
この物語の中の主要テーマは、1.「意識・自我」というものを進化したコンピューターが持てるのか? 2.人間の脳・機械の体を持ったサイボーグが自己のアイデンティティーに悩み続ける。 3.人間のDNAと同じく、進化のプロセスを持った人工知能プログラムの出現の可能性、ということですが、私の研究テーマである「自我」「遺伝子・DNA」の延長上にある問題点について取り扱われており、コンピューターによる第三の自我を人間のDNAと比較しながら明快に問題点を論じています。 こういう事について、まじめに考え続けて、それを作品として作り上げる人がいるなんてびっくりしました。
この作品の中からいくつかキーワードを抽出すると、
○生命とは、情報(DNA)の流れの中に生まれた、結節点にすぎない
○現代科学は、「生命」の定義すら出来ていない
○種として、人はただ記憶によってのみ個人たり得る
○コピー(クローン)ではいけない。遺伝のプロセスの中では、環境の変化の中でも種が絶滅しないよう、遺伝の度に膨大な記憶情報を都度捨てながら、変化と柔軟性を持たせるために新しい融合された遺伝子を作り出す機能を持っている。
こんなセリフが随所に出てきます。 子供だけでなく普通の大人も言っている意味が分からない人が殆どでは無いかなと若干心配もするのですが、とにかく多くの人に見ていただきたい傑作です。
「となりのトトロ」といい、この「ゴースト・イン・ザ・シェル」といい、世界中で日本人にしかできないすばらしい映像作品であり、日頃すべての面で自信喪失気味の日本にとって、これは世界に誇れる「日本から世界に向けたメッセージ」として自信を持って良いのではないかと思います。
この作品の衝撃的な結末を申し上げるわけには、いきませんが、「衝撃的」と感じるかどうかによって、作品全体の理解度が分かるような気がしますが、皆様の感想をお聞かせ下さい。
生命とは何か、遺伝とは何か、自我・意識とは何か、進化とは何かについてこの映画を見ながら考えてみるのもおもしろいと思います。 是非お薦めします。